INTERVIEW

INTERVIEW 小田急不動産×竹中工務店。事業主の想い、設計者の想い、成城への想い。

「成城らしさ」にこだわること

松井成城という街の歴史を振り返ると、1925年に、この街に成城学園(当時は成城第二中学校)が移転し、その2年後に小田急線が開通しました。私たち小田急グループにとって、成城はとても思い入れのある街です。成城には、住民同士でこの街をいかに良くしていくかを話し合い、自主的につくられた「成城憲章」があります。90年を超えて街の景観を住民のみなさんが守り続けてきた成城にふさわしい住まいをいかにつくるか、という位置付けでプロジェクトを開始しました。

篠崎成城で特徴的なのは、街路樹だけではなく、個人個人の住まいの庭が街の景観をつくっていること。閉鎖的になるのではなく、オープンに街と緑を共有することが街の魅力になっています。1925年から続く街づくりがとてもうまく継承されて、今に続いているなということを実感します。

秋山「成城五丁目猪股庭園」という歴史と趣がある数寄屋造りの建物が一般に公開されているのですが、本当に庭がきれいなんです。きちんと手入れがされていて「成城には本当に庭を大切にしている文化があるんだな」と再認識しました。本プロジェクトに取り組むにあたって、この街の価値観をどういうかたちで集合住宅に反映していくのがよいかを考えました。

松井第一種低層住居専用地域に建つ集合住宅として、まとまった敷地面積を活かし、十分な空地を確保するゆとりある計画を目指しました。

篠崎外観デザインについては、ファサードは街に見せる顔であるという考えで、その顔がやはり成城にふさわしいものかを追求しました。緑と壁を街に対して見せていこうと。住む方が変わっても、将来に渡って常に同じ顔を持ち続けるということを考えました。

秋山奇をてらう建物でなく、緑が豊かで周囲になじむ正統的な佇まい。それがキーワードになってくると思います。

「住まう」ことのクオリティを高める空間づくり

松井この街にふさわしい建物をつくっていただきたいというお願いを竹中工務店さんにさせていただき、その結果素晴らしい外観が生まれました。ただ、私たちがより重視したのは、「住まう」ことのクオリティを高める空間づくり。どれだけ光を取り込み、風が抜け、空や緑の景色を楽しめるか。心地よい邸宅をつくることにこだわり抜きました。

秋山そんな心地よい住まいをかたちにするために、開口部を多く取って、ハイサッシを採用したり、建物を雁行させることで風の流れをつくるなど、さまざまな工夫を施しています。

篠崎先ほど外観のお話をしましたが、あのデザインも、実は心地よく住まう、そのあり方を内側から考えて生まれたものです。今回、北側に窓を設けたファサードをつくりましたが、たとえば戸建ての家なら北側にも普通に部屋があり、北側の景色が楽しめることはごくあたり前だと思うんです。

秋山風の抜けや光の入り方は、戸建ての考えに近いですね。光でいえば南側からの光がすべてよいわけではなく、北側の優しい光や、東側の爽やかな光が大切な部分もあります。

松井今回、1フロアに最大5邸ありますが、パズルのように一邸一邸を組み合わせていくことで、各住戸の光の入り方や風の流れが違い、5邸それぞれが様々な顔を持っています。生活スタイルや住まいへのこだわりは、お客様の好みによって千差万別。それぞれに合ったプランをお選びいただけたらと思います。

「人の気配」を感じる住まいを

松井集合住宅では、コミュニケーションが取りづらい計画も正直あります。でも、私たちが大切にしたのは人と人との繋がり。住人同士のコミュニケーションを大切にしている成城らしく、「人の気配」を感じることが心地よいと思っていただく住まいをつくりたいと考えています。

篠崎今回は、エントランスとエレベーターホール、そして内階段を平面的だけではなく縦方向にも繋ぐことで、共用部全体が1つの空間として、空気や光、人を感じられるような計画にしました。また、東と西のエレベーターホールの窓を対面する形でシンメトリーに配することで、視覚的にも人の気配を感じられる仕掛けを施しています。

秋山人の気配を感じるのは、空間のつくりこみだけではありません。一枚一枚人の手で仕上げた「クレイマイスターライト」というタイルや、棒状の金属をねじることで滑らかな表情を生む内階段の縦ルーバー、柔らかな表情と手触り感のある大谷石を採用したりと、ひと手間かけた素材、風合いのある素材を使用することで、「モノ」から伝わる人のぬくもりも大切にしているのも大きな特徴です。

「成城」という街への回答

篠崎本プロジェクトは、「暮らし」をどうデザインしていくかが大きなテーマです。心地よさをどうつくっていくか、そのために、光や風、緑をデザインして居住空間をつくり、最後は街の風景としての外観をデザインする。風景というのは、街に対する責任です。成城の街と、成城に住まう方の暮らしと繋がっていく住まいをつくろうと心がけました。

秋山私が大切にしていることでもあるのですが、ここに住まわれる方が帰ってきた時に「いい空間だなぁ」と思っていただけるものをつくっていきたいといつも思っています。このプロジェクトが住まわれる方にも、街にも長く愛されるものになることを願っています。

松井見た目の良さではなく、私たちが目指しているのは、一つひとつに人の想いが込もった住まいをつくること。それが、100年近くに渡って、さまざまな想いを込めてつくりあげてきた「成城」という街への回答だと思います。

小田急不動産株式会社 住宅事業本部 開発企画部 マンション企画グループリーダー 松井みどり MIDORI MATSUI

リーフィアレジデンス等々力(2013年竣工)

株式会社 竹中工務店 東京本店 設計部 設計第5部門 設計1グループ長 一級建築士 篠崎 淳 JUN SHINOZAKI
株式会社 竹中工務店 東京本店 設計部 設計第5部門 設計1グループ 主任 一級建築士 秋山裕子 YUUKO AKIYAMA

竹中工務店 東京本店(2004年竣工)

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